the hinc

大阪野田駅近くの昭和レトロビルの1階を改修したヘアサロンのインテリアデザインである。

既存三角形の平面、高い階高、鉄筋コンクリート造の柱、ハンチのある梁などが時間を経て美しいものになっていた。ある人はそれを劣化と言い、ある人は長い時間が育てた美しさと表現するだろう。私達はその本質的な美しさをクライアントと共有し、できる限りこの美しい躯体を残すべく最小限の手数で場を計画した。

平面の中心に新たなボリュームとしてRの壁面を持ったカラーブースとスタッフルームを2分割し配置。余ったスペースを自然光で明るいカットスペースや待合のある領域と、奥まって暗く落ち着いたシャワーブースの領域に緩やかに分けた。各領域にはラワンベニヤに銅板、ミラーを即物的に貼り付けただけの箱や板、銅のパイプを曲げただけのハンガーパイプなどの什器、ラワンベニヤでできたスピーカーを用途に応じて散りばめた。

また照明計画が空間の特性を更に高めている。

3種類の色温度を持つ直菅LED照明を既存の躯体には4000k、カットスペースには3500k、シャンプーブースと待合スペースには2700kと異なる色温度とし、場の特性に合わせ高さを変えて配置している。

既存の建物には角を守る為に鉄のアングルが入って守られていたり、入っていない角が欠けていたりした。その事が長い時間をかけて美しいモノとして伝わってくる。美しさとは表層的なデザインでないと既存建物が教えてくれる。

私達もそれに倣い、段鼻に銅棒で保護したり、あえてジャンカを見せたり、美しい電気配線を見せたりを意図的に設計した。

結果、飾りではない本質的な空間が立ち上がった。

それは、一見表層だけをデザインするように思われがちなヘアサロンだが、顧客に向き合いその人を本質から美しく豊かにしてあげたいという彼等の想いとリンクしている。

設計監理 ひとともり+HAP/guild(Arino architects)  

照明計画 BRANCH LIGHTING DESIGN 

スピーカー listude

施工 ロウエ